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2007年9月18日 (火)

ある女医の叫び「医療崩壊よ!医療崩壊ッ!」

 ポチです。
 台風11号は朝鮮半島の方に抜けましたが、その影響で、昨日は雨が降ったりやんだりの一日でした。一転、今日は暑い一日でした。




 さて、今日のテーマですが、新聞の一面は、連日、自民党の総裁選のことばかり。どっちが総裁になろうがどうでもいい話で、なんの関心ももてません。

 それで、今日は、新聞ネタではなく、「医療崩壊」の話をしてみようと思います。

 というのは、先日、知り合いのドクターと話をする機会があったからです。知り合いのドクターというのは、宇部市内のある総合病院に勤務する内科の女医です。
 彼女は、「医療崩壊」の実態について、切々と話してくれました。


 彼女は、「この間、奈良で出産間近の女性を病院が次々に受け入れず、大阪まで行ったが、子どもは助からなかった、という話があったけど、なぜそうなるのかわかる?」と言います。
 私が「?」という顔をしてると、「そんなことも知らないのか」というように、とうとうと話し始めました。とくに、メモを取りながら聞いていたわけではないので、覚えている範囲で箇条書きにまとめると、次のような話でした。

(1)どこの医療機関も医師不足で、当直をして夜中じゅう急患を診て、当直明けで、一日中外来をこなし、それに加えて、入院中の自分の患者を診る、という勤務形態が常態化している。その結果、医師は疲れきっている。

(2)当直医は、専門の科の患者だけ診るというわけにはいかない(たとえば、耳鼻科の医師が当直しているところに、盲腸の患者が運び込まれることもある)

(3)しかし、「病院は患者を元気にしてくれるところ」というのが世の中の常識であり、その「常識」を覆すと世の中から指弾される。

(4)その結果、当直医は、急患に追われる実態に加え、医療ミスを恐れて、それ以上の患者を拒否するようになる。

(5)そうしたなか、医者は今、逃げ出しはじめている。残念ながら、医者には逃げるところがいくつもある。その一つが老人病院。急患が運び込まれることもなく、とくに大きな治療をする必要もない医療機関へと。(もちろん、彼女は批判的に言われていました)

(6)医師だけが閲覧できるサイトがあり、そこを最近覗いてみたが、疲れきっている医師たちの声で埋まっている。


(不正確なところがあったらすみません。うろ覚えなもので)


 そして、彼女は、ビールをガ~ッとあおりながら、「あなた、当直の間に何人くらい患者が来るか知ってる?医療崩壊よ、医療崩壊ッ!」と叫ぶのです(アッ、申し遅れましたが、この会話は酒の席でのことです)。



 ということで、彼女の話はわかったようなわからなかったような・・・。どうも医者の実態というのがわからないもので、ピンとこないところもありました。



 そこで調べてみました。

 世界保健機構(WHO)は2000年に、日本の医療を「世界一」と賞賛したそうです。その理由として、世界一の平均寿命と世界最高水準の乳幼児死亡率の低さ、そして、世界有数の医療機関へのアクセスのよさなどが総合的に判断されたといいます。このこと自身はたいへんすばらしいことです。

 しかし、次の数字をみてみると、その世界最高水準の医療が、まがりなりにも国民の努力と運動で守られてきている(そろそろ危機的な状況ですが)国民皆保険制度と医療関係者の献身的な努力によってなされている、ということがよくわかります。


 まず、ひとりの医師が年間に診る患者の数です。
 OECD(経済協力開発機構)加盟30カ国(今年5月に5カ国が加盟し、現時点では35カ国)でみると、平均で約2400人であるのに対し、日本では8000人をこえているそうです。
 なんと3倍以上です!


 次に医師の数です。
 日本には今、約27万人の医師がいます。人口1000人当たりでいうと2.0人です。
 ところが、OECD加盟国の平均でいうと3.1人。アメリカが2.4人、ドイツ3.4人、フランス3.4人、イタリア4.2人となっているそうです。
 日本で、人口単位の医師の数が一番多いのは東京ですが、その東京ですら2.6人で、OECD平均に到底達しないのが実態です。

 ちなみち、私の住んでいる山口県は約2.2人で全国平均をなんとか上回っています。そして、最低は、なんと埼玉県、それに続いているのが千葉県です。1.5人を割っています。

 政府は、医師が足りないのではなくて「偏在」しているのだと説明し、医師の数を増やすことに消極的ですが、首都圏の埼玉や千葉でこの数字というのは、この説明がいかにいいかげんかを示しています。


 次に医師の勤務実態です。
 調査によると、次のようになっているのだそうです。
・7割以上の勤務医が当直業務をともなう連続32時間勤務を月に3回以上おこなっている
・勤務医の3割近くが月に1日も休日をとれない
・96%の勤務医が法定勤務時間以上働いている
・当直に従事する勤務医の9割が翌日も通常勤務をしている
・勤務医の週平均勤務時間は、66時間(男性67時間、女性64時間)で、勤務医の多くが過労死の認定基準を超えている

 その結果、体調を崩すとともに、医師としての使命感、やりがいを失い、やめようとする勤務医が少なくないそうです。


 長距離深夜バスの運転手が、長時間の勤務を強いられた結果、事故をおこしたという事件が最近ありました。「働かせ方」が大問題になったと記憶しています。
 では、この医師の実態はどうでしょうか。これで、患者が安心して医療機関にかかれるでしょうか。
 また、こんな医師が意欲を失うような状態を放置していて、「世界一」と言われる日本の医療は守れるでしょうか。


 実際、医師の過労死や過労による自殺も起こっているそうです。また、医療事故は後を断たず、訴訟もどんどん増えています。
 使命感に燃えて、命を切り縮めて働き、その結果が、「業務上過失致死罪」による逮捕、あるいは過労死というのでは、救いようのない人生となります。

 しかも、ある過労自殺した医師の妻のコメントを読んでいてビックリしたのですが、

 「当直」とは労働時間ではない のだそうです!

 労災申請にたいして、労働基準監督署は、保険の不支給決定をしましたが、その理由が、これだったというのです。
 彼女のコメントの一部を引用しておきます。

「労働を伴わない法規上の宿直と、急患も病棟の重症患者も診る実際の夜間勤務の言葉上での摩り替えが行われていました。国の認識に改めて憤りを感じました。一般企業では決して考えられない働き方が医療の現場では普通に常識として罷り通っていたのです」



 なるほど、最初に書いた女医が言ったように、これでは「医師が逃げ出しはじめている」というのも本当かもしれない、と思えるようになりました。
 そして、彼女の言う「医療崩壊よ!医療崩壊ッ!」という言葉が実感を持って迫ってきました。

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