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2007年6月12日 (火)

これでいいのか介護保険―コムスン問題に寄せて

 ポチです。
 蒸し暑さを感じるようになった今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。



 今日は、コムスンの話題で考えていることを書いてみようと思っています。十分まとまっていないので、完成するかどうかわかりませんが、書きながらまとめていこうと思っています。

 さて、コムスンの問題は、ご存知の通りですが、一応、簡潔に一連の経過をまとめておきます。

(1)コムスンは、ヘルパーの数などを水増しで申請して介護保険を不正に請求した
(2)都道府県がこれを摘発し処分しようとする直前に事業所を閉鎖し、処分逃れをしていた
(3)そうしたことが繰り返されることで、厚生労働省が事業所の更新不許可の方針を出す
(4)コムスンは事業を同じグッドウィルグループの会社に譲渡し、引き続き介護事業を続けようとした
(5)厚生労働省がそれに「待った」をかけた
(6)このままでは、6万人の利用者に重大な被害が出る

というような話でしょうか。

 たしかに、コムスンは悪質です。それはハッキリしています。
 ・・・・しかし、それだけでいいのか?という思いがつのって仕方ありません。

 テレビを観ていたら、介護施設の事業者が「そもそも介護事業などというのは儲かるものじゃない。介護で儲けようと思ったら必然的にああなる」という趣旨の発言をされていました。
 この発言の裏には、介護保険制度の根本的な欠陥が見えてくるような気がします。



 今度の事件がおこったあと、閣僚の方々が様々なコメントを出しています。たとえば・・・。

〇大田弘子経済財政担当相
「法令違反はとんでもない」しかし「民間の参入が悪いという方向でなく、健全な介護市場、介護保険制度のあり方に向けてルール整備をしていくことが必要だ」(「毎日」)

 何か言い訳じみていませんか?
 そして、もっと露骨なのがこれ。

○伊吹文明文部科学相
何かおかしなことをしてないと利潤は上がらない。子会社に衣替えするというようなことはさせるべきではない」(時事通信」)


 大田さんの発言は、民間が参入して健全に介護事業をするにふさわしいルールが現時点では存在しないということを言われているのだと思うし、伊吹さんの発言にいたっては、そもそも介護事業は儲かるはずもないとおっしゃっているわけです。


 政府は、介護保険制度導入を機に、介護事業への民間企業の参入をすすめる一方、公的な責任を放棄してきました。しかし、こんなことは言うまでもないのですが、民間企業の原点は利潤です。そこに利潤があるから企業は参入してきます。
 しかし、政府のすすめてきた介護保険制度は、本当に民間企業が参入するにふさわしい制度になっているのでしょうか?

 もちろん、根本的に、「介護」というものが営利法人にふさわしいものかどうかという議論があります。最近では、「医療」や「学校」なども営利法人が参入することが可能になろうとしているようですが、これらも含めて、私自身は疑問を感じています。
 しかし、その問題はおくとして、介護保険制度それ自身のことについて考えてみます。


 そもそも介護保険制度はなぜ導入されたのでしょうか?
 政府は、「社会で支える介護へ」などと宣伝しました。たしかに、そういう側面もあり、内容さえふさわしいものになっていれば、その役割は十分果たせたと思います。
 しかし、導入の動機として忘れてはならないことは、国の介護福祉施策への経費を減らしたいという点があったことです。
 介護保険導入に伴い、介護施策への国庫負担割合は50%から25%へと大幅に削減されました
 その結果、この制度は大きな矛盾をかかえることになりました。

 一つは、これは利用者にとっての面ですが、保険料・利用料が高すぎるとともに、保険給付の支払い額を引き下げるために、介護保険から排除する高齢者をたくさん生み出しているという問題です。
 必要な介護が受けられない高齢者、「予防」という名前での介護保険制度からの排除など、あげれば切りはありませんが、これは主題とは違うので割愛します。

 二つ目に、今日の記事の主題に関わる問題ですが、介護報酬の設定が安すぎるという問題です。
 安すぎる介護報酬は、介護事業者に深刻な影を落としていると思います。ヘルパーさんはじめ職員の方に過酷な労働条件や低賃金を強いざるを得ない実態です。
 もちろん、コムスンのようなところは論外ですが、一生懸命やろうとすればするほど、手厚い介護をしようとすればするほど、事業が困難になっていく、職員を酷使しなければいけなくなっています。
 介護事業の柱はマンパワーです。それを担うヘルパーさんや職員のみなさんがやりがいをもって働けなくて、どうしてこの事業がなりたっていくでしょうか。事業者の方たちが事業の将来に展望を持てなくて、どうして初心を失わず介護事業にとりくんでいけるでしょうか。


 大田さん。あなたの言われる「ルール整備」がどういうものか、先のコメントだけではよくわかりませんが、それが、今回のコムスンのような不正を許さないというだけなら片手落ちでしょう。

 伊吹さん。「何かおかしなことをしていないと利潤はあがらない」ような状況にこそ問題の根源があるのではないですか?それが当然だと言わんばかりのあなたの発言には恐れ入るばかりです。

 減らした国庫負担割合を元に戻し、介護報酬の見直しを含む介護保険制度の抜本的見直しこそが今求められているのではないでしょうか。


 介護保険のことに詳しいわけではありません。よくわからないままに書いています。でも、介護保険の携わっている友人は何人かいます。彼らの悲鳴を聞くなかで私なりに考えていることを書きました。間違っている点があれば指摘していただければと思っています。


 というようなことを書いていたら、今朝の新聞にこういうことが書いてありましたので追記しておきます。


コムスン介護事/分割売却浮上/収益低い「訪問」敬遠/ワタミ
「『訪問介護はお断りさせていただいた。今の介護報酬のなかでやるのは難しい』。ワタミの渡辺美樹社長は11日、コムスン買収に名乗りを上げた場で、訪問介護事業は引き受けない意向を明確にした」(「朝日」)

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コメント

こんにちは^^
とても分かりやすく、纏めてありますね。
これから、ひょっとしてお世話になるかもしれない介護の問題は、
とても、他人事ではありません。
介護行政の根本のところから間違っているのでしょうね。

私でも分かるのは、現場を担っている方々の賃金が低すぎる事です。

有名大学卒だから、高給料でなく、
労働力に見合った、賃金が支払われるべきでしょうね。

投稿: una | 2007年6月12日 (火) 15時27分

unaさん

>介護行政の根本のところから間違っているのでしょうね

 6月からの住民税引き上げで、いま各地の市役所では大騒動になっているそうですね。住民税の増税に連動して介護保険料も上がったという方も多いようです。
 政府は、「高齢化社会」「高齢化社会」と声高に叫んでいますが、高齢者の存在を邪魔者であるかのような描き方をするだけです。
 いまのような状態を放置していて、介護事業を担う人がいなくなってしまったらどうするつもりなのでしょうか。
 現場で、高齢化社会を支えている人たちが希望を持って働けるように手を差し伸べることなしに、何も問題は解決しないと思います。

投稿: pochi | 2007年6月13日 (水) 17時04分

コメント&TBありがとうございました。


>減らした国庫負担割合を元に戻し、介護報酬の見直しを含む介護保険制度の抜本的見直しこそが今求められているのではないでしょうか。

仰るとおりだと思います。もともと医療・介護に市場主義を導入すること自体を問う必要があるでしょうね。
折口氏はここで儲けようと思った、その出発がそもそも間違っていたわけです。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: これお・ぷてら | 2007年6月14日 (木) 11時07分

ホントにおかしな制度です。
「介護はもうけではない」というなら、民間でやる人はいないはずですよね。介護は国が責任を回避する制度だと思います。当時の厚生相の役人が、「10年持たないだろう」と言ったという話を聞きましたが、ひどいですね。
コムスンも悪いけれど、それとは別に問題がたくさんありますね。一番いけないのは、この制度が、高齢者や介護者のことを思って作られたのではなく、税金を使いたくなくて出来た制度であるということ。高齢者の方がせっせと働いて納めてきた税金なのに・・・ね。

投稿: jun | 2007年6月14日 (木) 21時29分

これお・ぷてらさん
コメントありがとうございます

行政の仕事さえ民間に渡そうって言うのですから恐ろしい話です。国民の暮らしのことなんか何も考えていないから、なんでもかんでも「効率」を基準にする発想が可能になるのでしょうね。

投稿: pochi | 2007年6月15日 (金) 07時57分

junさん
コメントありがとうございます

とにかく嫌な気分になるのが「受益者負担」という言葉です。
高齢になって、体が十分に動かず、生活ができなくなっている方が生きていくのに最低限必要な介護サービスを受けるのがなぜ「益」なのでしょうか。
戦後の日本を苦労して生き抜いて、今の日本の経済を形つくった方々にもっと敬意を持たなければいけないと思います。

投稿: pochi | 2007年6月15日 (金) 08時05分

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