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2007年5月16日 (水)

地方分権の正体

 ポチです。
 今日から出張。3~4日、留守をします。






 今日の「朝日」におかしな記事がありました。

「猪瀬氏『市議会議員は半分不要』/分権推進委そろって理解」

 15日に開かれた政府の地方分権改革推進委員会で委員の猪瀬直樹氏が「地方自治体は放漫経営」「(財政破たんした)夕張だって大阪市の放漫経営だって、チェックしなかったのは議会」「高い給料をもらって三流の存在。(委員会は)味方につけようなんて浅ましい考えをもっちゃいけない」と発言したとのこと。
 この発言に、委員長代理で前岩手県知事の増田寛也氏や委員長の丹羽宇一郎氏も同調しました。
 そして、記事はこう締めくくります。「権限委譲などで分権論者は『国に厳しく、地方に甘い」と見えがち。しかし、この日は地方側にも分権に向けての自覚、責任感を厳しく求める結果になった」。



 まず、「」なのは、「朝日」の言う「分権論者は国に厳しく地方に甘い」とはいったい何のことなのか、ということです。「地方分権をすすめる」ということは、「国にとっては不利、地方には有利なことをすすめる」ものだと理解さえているのでしょうか。

 たしかに、権限委譲をめぐっては、中央省庁が自分たちの権益を奪われるのはイヤだと綱の引っ張り合いをしていることはたしかです。しかし、国のすすめる「地方分権」なるものをそんな表面的で薄っぺらな理解しかしてないこの記者に無性に腹が立ってきます。

 そもそも「地方分権」なんて、国の支出を減らし、その負担を地方に押し付ける「方便」にすぎません。その代名詞は、なんといっても「三位一体の改革」です。権限委譲なんて、そのなかで派生的にうまれた事柄に過ぎません。

 「三位一体の改革」とは、国庫補助負担金の廃止・縮減、地方交付税の見直し、税源委譲の三つです。

 国庫補助負担金は年間約20兆円。国庫負担金と国庫補助金があります。
 国庫負担金は、国民健康保険や生活保護への負担金など法令にもとづいて国に支出を義務付けているもの。国庫補助金は、私立学校への補助金をはじめ、福祉、教育の制度など特定の事業を奨励するためのものです。
  20兆円のうち、老人医療、介護、保育所、生活保護などの社会保障関係が10兆7000億円(61.2%)、義務教育費などの教育関係が3兆1000億円(18.1%)を占めています。これらは、憲法にもとづく国民の福祉や教育の水準を保障するために、国が支出しなければならないものです。その廃止、削減なんてとんでもない話です。

 地方交付税とは、全国どこの自治体でも標準的な行政水準をおこなうことを財政的に保障する制度です。
 全国の地方自治体は、様々な条件の中で存在しています。都市部にあり、人口密集地で住民税がたくさん入る自治体もあれば、山間地で過疎が広がっている自治体もあります。企業立地がすすみ固定資産税がたくさん入ってくる自治体もあれば、そうでない自治体もあります。
 こうした物理的条件は自己努力ではどうしようもないことです。しかし、現実問題として、住んでいる自治体の財政状況によって受けることのできる行政サービスの水準が大きく異なることは憲法上許されないことです。こうしたことから、国が国民から徴収した税金の中から、それぞれの自治体が標準的な行政をおこなっていくのに必要な不足額を国が交付する、これが地方交付税です。
 これを削るということは、地方交付税の国民の生存権をまもり、地方自治体の財政的な保障をはかるという機能を壊していくということです。

 そして、税源委譲。しかし、委譲されるのは、削減された額の8割だけ。


 これが「地方分権」と称するものの正体です。
 どうして、これが「国に厳しく」「地方に甘い」ということになるのでしょう。「朝日」の見識を疑います。




 そして、そして、猪瀬氏の発言の「」です。

 自治体の財政破たんの原因に、自治体の放漫ぶりがあったことは事実です。大問題だと思います。それをチェックしなかった議会の責任。それもそのとおりです。
 しかし、ちょっと待ってください。問題はそれだけでしょうか。
 アメリカの要求に従い、膨大な公共事業の地方に押し付けてきた責任を無視することはできません。

 1990年3月、当時の海部内閣が日米首脳会談でアメリカに、10年間で総額430兆円もの公共事業をするを約束したことが始まりでした。この首脳会談は、ブッシュ大統領(現ブッシュ大統領のお父さん)が、海部首相を電話一本でよびつけたもので、“ブッシュホン”と皮肉られたことをおぼえていらっしゃる方もおられるのじゃないでしょうか。ちなみに、当時の自民党幹事長は小沢一郎民主党党首でした。
 さらに、94年、自民、社会、さきがけの三党連立の村山内閣は、クリントン米政権の要求にこたえ、430兆円の計画を200兆円も上積みして630兆円にしました。

 10年間で630兆円。年間平均63兆円。日本の国家予算にも匹敵するような金額です。これを国と地方でおこなっていく。
 「必要だからつくる」ではなくて、「とにかくつくる」です。全国に「船の来ない港」「工業団地という名の空地」が次々につくられました。

 このことが自治体財政を危機に追い込んだことは明らかです。
 1990年度には67兆円だった全国の自治体の借金額は、2001年度には190兆円にまでふくれあがりました。ほぼ3倍です。

 もちろん、だからといって地方自治体や地方議会の責任をあいまいにするわけにはいきません。国がいくら押し付けてきたからといって、キッパリと撥ねつければよかったのですから。
 しかし、地方の責任を言うのなら、その大元である国の責任を抜きにするのは、どう考えても片手落ちじゃないでしょうか。

 だいたい猪瀬氏が委員をつとめ、その成果を誇っている「道路公団改革」の結末はどうだったでしょうか。
 高速道路整備計画は温存し、ムダな高速道路建設にいっさい歯止めがかからないという点でも、40兆円もの債務返済の保証がなく国民に巨額の負担を残すおそれがあるという点でも、採算の合わない高速道路建設の建設費という形で、道路特定財源を温存し続けるという点でも、まったく「改革」の看板に値しません。



 たしかに「こんな人が議員なの?」という人がいることは事実です。しかし、だからといって、猪瀬氏のような人に、「放漫」だとか「三流」とか「半分にせよ」だとか言ってほしくないと思ったポチでした。

 ・・・では、また。

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コメント

こんばんは
私はこういう問題がすごく苦手なのです。
でも、夕張が見せしめのようにマスコミに取り上げられ、さあ、減らせ、やれサービスをなくせ、というのは酷いと思います。

公務員、役場職員を減らせ、と目の敵のようにいうおじさんが私の身内のもいるのですが、人件費を減らすなら、本当に減らしてもいい人を減らさずに、実際に働く現場の人をへらしちゃうから、結局サービスは低下し、住民にしわ寄せがいくのです。

三位一体って、変ですよね。二みです。国(政府)と住民。

投稿: jun | 2007年5月21日 (月) 21時58分

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